2015年05月24日

愛よりも知らなかったもの

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5月18日(月)

数日前の話。

ライブが終わって、夜遅く部屋に帰ってきた。
モソモソと飯を食い、さぁ寝ようかと思った。

「あ、しまった、ベランダに布団干したままライブ行っちゃったんだ!」

めんどくせーな、でも取り込まなきゃな、ブツブツ言いながらベランダに出て、その瞬間ワタシは驚倒した。

階下の住人の敷地にワタシの布団が落っこちていた。

「ウソだろ!なんてことだよ!こんなコトがあり得るのかよ!」

困った。布団を下の人の家に落としてしまった。

丑三つ時である。引き取りに行く訳にはイカナイ。

真夜中に面識のない人の部屋へ行ってベルを押して『兄ちゃん、すまんな、布団落としてもうたがな。今から寝るさかい悪いけど布団取らせくれへんか?」

口が裂けてもそんなコト言えない。

宇宙で一番臆病なワタシにそんなワイルドな訪問はできない。しかも丑三つ時なんだぜ。相手がサイコパスだったらどうするの?コワイ。

「ゴキブリのように寝ようじゃないか、板の間でね。そして明日、朝日が昇ったらまた考えよう!」

問題の棚上げこそが我が人生!そうだよ、また明日考えればイイじゃない。一晩くらい布団なしでもガマンできるだろ。さあおやすみ…。


翌朝目が覚めて窓を開けた。

豪雨がザーザー降っていた。

今から自分がすることが、いかに愚かで悲しい行為か充分に判っていたが、ワタシはそうせざるを得なかった。

ベランダに出て階下を見下ろした。

ワタシの布団は死体のように横たわり、ビッショビショに濡れていた。

布団は逝ってしまった。もうこの布団では寝られない。たとえ乾いたとしてもね。

新しい布団を買わなきゃナラナイ。家賃更新月に度重なる非情の出費。そんなの無理だよ。財布の中はスッカラカンさ。人間の暮らしに布団なんてそれほど必要か?いらないよね?腹の据わった人間に布団なんて必要ナイよね。

ワタシは床で寝た。

牢屋で寝てるような錯覚に支配された。一秒たりとも安眠できなかった。

朝目が覚めて身体中がバキバキに痛かった。俺はバカだな。ダニ以下だな。いつも何かがうまく行かないな。

布団を買いに行くヒマがナイし、メンドーだ。翌日から床で眠るようになった。痛いからヤだったけど、疲れ過ぎていてすぐに眠りに堕ちてしまう。そして朝まで目が覚めない。

悪夢ばかり見るようになった。
夜が来るのが億劫に感じるようになってきた。また鬱状態になってきた。

小一週間ばかり布団なし生活を送った。悪夢のクオリティがどんどん上がってきた。ついには夢の中で殺人を犯してしまった。「捕まってタマルカ!」夢の中で逃げまどった。

これではイカンナと言うコトで、ようやく布団を買いに行った。
殺害動機を尋ねられ「布団が無いのでカッとなってやった」では情状酌量の余地がない。真摯に反省する態度を示して陪審員からの印象を良くしたい。なので布団を買いに行った。ニトリは安い。愛するに値する企業だ。

再び布団で寝るようになって嬉しかった。やっとこれで一人前の男になれたような気がした。ここまで来るのに随分時間がかかった。遠回りの連続だった。これからは残りの人生を謳歌したい。


今夜も眉間にシワを寄せながら、布団の中でもグッと身体を折り曲げて眠っている。エビのように丸く縮こまっていないと眠れない。悲しい性である。
そんな不自由な姿勢で今夜も悪夢をる。

ワタシは『快活な目覚め』というモノを知らない。一度たりとも経験したことがナイ。
愛より知らないものが、ひとつだけあった。それは『心に曇りひとつない、気持ちの良い目覚め』だった。

グッドナイト、スリープタイト。
明日は「最高に気持ちの良い目覚め」がやって来るかも知れない。
いつか必ず、そんな日がやってくると信じている。その日を夢見ている。

だからおやすみ。クロージョライ、ウェナイキスユー、ツモローアイミスユー。グッドナイト、スリープタイト。
posted by ツリー at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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