2014年09月01日

夢の行き先は消えかけた花火だった

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8月30日(土)

大阪に帰ってきた。

新大阪の駅に家族が迎えにきてくれた。

久しぶりに会う甥っ子ふたりが照れていて無口だ。
しかし実家に着く頃には狂乱状態で俺にまとわりついてはしゃいでいた。

ずっと一緒に遊ぶ。

やれ相撲だプロレスだと子供達の体力は超人的に底無しだ。中年はヘトヘトになる。でも楽しい。一緒に遊ぶために帰ってきたのだから。

長男ユーキ君と花火を買いに行こうと二人でサイクリング。

ユーキは今春、小学一年生となり、自転車も補助輪なしのお兄ちゃんポイのに乗っている。彼はそれを誇示したがった。

ワタシも確か小学一年生の時に父に自転車を買ってもらった。その日のことをハッキリと覚えている。

自転車屋のオヤジが前輪の泥よけカバーの所に筆とペンキでワタシの住所と名前を書いてくれた。その字があまりにキレイで、この世にこんな美しい文字を書く人がいるのか、と強く感動したのを覚えている。
自転車自体はあまり上手く乗りこなせないので好きではなかった。グラグラして下手くそなサイクリングだと、幼いながらに劣等感を抱いていた。


ユーキと二人で自転車に乗ってあてどなく花火を探し求めてさすらうロードムービーin住吉区となった。

「なぁオッチャン、寝ててもな、自転車が勝手に動いてな、ちゃんと連れてってくれたらエエのになぁ。そない思えへん?」

ユーキが変な質問をし始めてきた。

「そやね。自転車漕ぎながらタクシー乗ってるみたいなモンやろ?それは楽でエエわなぁ〜」

ワタシは言葉を返した。

ユーキはまだ運転がおぼつかないため、しっかりと前を向いたままワタシとの会話を続けている。

「ほんでな、楽しい夢を見てたら、目ぇ覚めた時にメッチャ楽しい所に到着してんねん!」

ナニその子供ならではの発想!

寝てても勝手にチャリが動いて連れてってくれる。しかしその自転車の行き先は、見ている夢の内容で決まってしまうとのこと。

「ありゃ〜ユーちゃん、だったら今、花火買えないかも知れナイじゃない?だって花火の夢を見ないと花火屋さんにたどり着けないじゃナイ?」

ユーキと話しながら頭の中では瞬時にソープランドやおっぱいパブなどで浮かれ騒いでいる夢を見ている自分を妄想をしていた。
目が覚めた時、俺がいるべき場所はソープランド。俺の深層心理はそれを熱望しているようであった。

「オッチャン、でもな、コワイ夢見たら、メッチャコワイ所に行ってまうねん!お化けいっぱいおんねん!そこ行くねんで!」

ユーキは沈痛な表情で「いい事ばかりはありゃしない」というコトを俺に説いてくれた。コワイ夢を見たらそのまま地獄行きとな?

俺はたどり着いたソープランドで、女どもが全員タレ乳の鬼ババばかりだったという妄想にトリツカレテいた。

「じゃ、じゃあユーちゃん、熟睡しすぎて夢を見なかったらどないなんの?どこに到着するのよ︎」

俺は6歳児に逆質問してみた。こまっしゃくれたガキの妄想を打ち砕く大人のリアリズムでギャフンと言わせてやるぜ!

「夢見なかったら、フツーのマンションやねん。なーんもないねん!」

なにもないフツーのマンション?イマジネーションが随分味気なくなっちゃったね。そんでどうなるの?

「勝手にドア開けて部屋に勝手に入って行ってな、もうそこに住むねん!中に人住んでても、相手が「うわー!」言うてもエエねん。そこに住むねんで!」

じゅ、住居不法侵入!バブルの頃の地上げ屋みたいなコト言ってんじゃねーよ!ユーキよ、キサマ何を言ってるんだ?俺の「ルームメイト」って歌と発想がまったく一緒じゃナイか!

「とにかく夢見てないならしゃーないわ!ドンドンとドア叩いて、入って行って住むしかナイねん!」

ユーキ君は自説を曲げなかった。そして真剣な顔を崩さず、ひたすら前を向き続けていた。

「オッチャンはな、もう東京に行かんと大阪で俺らと一緒に住まなアカンねん。もう東京帰ったらアキマセンヨ!」

大阪に帰省するたびユーキから受ける陳情である。今回もまた言われた。

そうね、オッチャンだってココに住んで毎日、ユーちゃん達と一緒にいたら幸せなんだどね…。実際、毎日毎日アンタらの事ばかりは考えているんだけどね…。

頭の中に、深い霧がかかったような感情が広がってゆく。蒙昧とした哀しみ。随分、つまんない陳腐な表現じゃナイカ…。とにかく俺の頭の中にソープ嬢が入ってくる余地は、もはや1ミリも無くなっていた。

行くべきか。戻るべきか…。
二人の男が口を真一文字に結んで自転車を走らせている。
結局、花火は見つからず、昨年の残り物の花火で遊んだ。

花火は少しシケていて勢いがなかったが、甥っ子達はワーワー喜んで遊んでいた。

夢の行き先は消えかけた花火だった。
posted by ツリー at 12:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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