11月28日(水)
熱の症状が治まってきたと思ったら今度は咳がヒドくなってきた。
1年半くらい前、気管支炎が喘息のようになり、咳のしすぎで肋骨にヒビが入ったことがある。
あれはホントにツライ経験だった。もう二度とゴメンだと思っている。
ところがまたしても今回、咳が止まらなくなってきた。職場でもずっとゲホゲホやっている。スゲエツレーよ。
俺はことさら大袈裟に咳をして、死にかけ寸前のようにのた打ち回ってみせた。
『クククク…。見よ、この俺の苦しみようを!誰が見ても重病人だぜ。あと5分もしてみな、「角ちゃん大丈夫?ワタシ達あなたが心配よ。どうか早退して下さい!」って言うだろうさ!』
俺の職場は俺以外全員女の子なんだ。もがき苦しむ危篤患者をほっとけない優しいコ達ばかりさ。早退は確実だと思わないか?
「何を言ってるんだよ!君達を置いて一人で帰れる訳ないだろ!心配しないで、最後までいるよ。君達の力になりたいんだ!」
俺はそんなセリフを用意していた。女どもは俺の男らしさ、仕事に対する一途さにメロメロになり下半身をくねらせるだろう。俺は密かにほくそえんだ。
2時間経ったが誰も何も言わない。俺はゴールを決めた時のラモスのように膝まづき、天に向かって両手を広げて咳をしまくってみせた。
「うるせえんだよ、オバサン!」
職場でなぜか俺は『オバサン』と呼ばれている。
はした金で平気で人を殺せる冷血なタフガイに向かって『オバサン』とは何ごとだ?俺にはさっぱり訳がワカラナイ。
「いや、あのね、どうも体調が悪くて、咳がね、止まらなくてね…」
俺はオドオドと挙動りながら我が身の窮状を訴える。
「あ、悪いけどこのパッキン倉庫にしまってきて、オバサン。」
フト見ると牛馬でも運べそうもない大量の段ボールが山積みになっていた。
『ううっ、判ってくれ、俺は病気なんだ、危篤なんだ!』
俺はベルトがゆるみ半ケツ状態で荷物を運んだ。
額はおろかケツまで汗だくだった。
その内完全にズボンがズリ落ちて、ポコチンとケツが丸出しになった。俺はそのままヨロヨロと荷物を運び続けた。館内に悲鳴が響き、警棒を持った警備員が俺に向かって突進してきた。
うーむ、それにしても人生とは思い通りにイカナイものだ。生きるとは一体なんなのだろう?外気にさらされたケツとポコチンはその答えを知っていたのだろうか?知らないのは果たして俺だけなのだろうか?
たいていのコトならば自分の身にふりかかるコトはすべてイイことだと思っている。もっと単純に言えば芸事のタメには日々楽しいばかりではイケナイと考える。
例えばガミガミ怒ってばかりいるイヤな野郎が、実はとても親身になってこちらのことを思っていてくれていたり、逆にニコニコ笑いながら足を引っ張ってくるコワイ奴がいたりと世間には色んな人達がいる。
時折アップアップと窒息しそうになるが、俺にはそんな『世間』こそが歌の宝庫のように思える。女遊びやバクチなんかよりよっぽどスゴイ芸のコヤシとなる宝庫なのだ。
『人は人、自分は自分』
これは母の口癖で、今や俺の鉄則でもあるのだが、それでも時々テレビなどで歌ってる人を見るとついブラウン管に向かって吠えてしまう時がある。
「テメエ何エラそうなコト言ってんだよ!オマエ『世間様』を喜ばせようって気があんのかよ?何様だと思ってやがんだい!」
などとツイ『エラそうな』コト言ってしまう。
でもね、テメエの生半可な『苦悩』や『想い』なら、そんなのどうでもイイんだよ。もっと我々を直接的に笑わせたり泣かせたりしてよ。
俺たちゃ一日中働いてクタクタになって帰ってきてテレビを点けるんだよ。
一刻も早く夢の中に行かせてよ。1cmでもいいから現実から離れて宙に浮かせてよ。アンタ達プロなんでショ?それぐらいできるんでショ?男らしく請け負いなさいよ!
『謙虚』がモットーのワタクシがはしたなく吠えてしまった。しかし『オバサン』はいつだってイキリ立って吠えるものさ。どうかご容赦願いたいぜ!
でも『人は人』で『自分は自分』だもんね。俺も演る側の時は精一杯ガンバンなきゃ!だから30日の7thフロア見に来てね。出番は9時過ぎ頃だぜ!ヨロシク、ケツむき出し!

