
9月10日(月)
会社が終わって猛ダッシュで7thフロアへ。今日はプチダイナミックオーシャンズのへヴィーギグだ。鼻がもげ落ちそうな腐臭を漂わせるために俺達は渋谷にやって来た。テメエらも嗅ぎたかったのだろう、この馬鹿げたニオイをな。
今日は大好きな『オカープー』と共演できて嬉しかった。
それにしても俺は思う。アイツらの凄さは一体なんなんだ?俺の目はずっと釘付だった。
空子さんのパフォーマンスや純くんのドラミングを見たり聞いたりしているだけで俺は夢見心地になる。
『ダイナミック以外の有能なミュージシャンは全員引退すべき。』
それが我々の統一見解なのだが、オカープーはあまりに素晴らしいので好きにならずにいられなかった。
ちなみに空子さんは『アタシもダイナミックに入りたいッ!』って言うので「そうかい、じゃあ今日からアンタは『空子ダイナミック』だ!』と言ったらタジタジになって絶句していた。やはり誰だってイヤなのだろう。ヤクザになるよりタチが悪いからね。
さて今宵の変則ダイナミックはいかがだったかな?ライブ中トイレに行く人が続出してたよね。みんなゲロを吐きに行っていたんだろ?その気持ち判るんだけどさ、テメエらもやしっ子だよ。俺が気合いを入れてやるよ。
ワンステージじゅうオーディエンスは俺を見ていなかった。
「なぜなんだ!真ん中で歌っているのに誰ひとり俺を見ちゃいねえ!」
俺は客どもの視線の行方を追った。やはり全員がエリザベス・ダイナミックに釘付けになっていた。
とにかく異常だ。ケタ外れの異常者だ。目をそむけたい、しかし見てしまう、そんなすごい恐怖のオーラが彼女から発散されている。全員が凍り付いていた。
「いいかい、りかちゃん、痴漢電車の間奏でカズー吹いてごらん。」
楽屋で事前にそう言っておいたのに、いざ本番で「カモ〜ン間奏!」って彼女に振っても全くカズーを吹こうとしない。
『えっ、なんなの?間奏ってなんなの?いったいワタシに何をさせたい訳?カズーってどれ?』
矢継ぎ早に質問を浴びせかけながら俺に詰め寄ってくる。
「マ、マイクから離れるんじゃねえよ!にじり寄って来るんじゃねえよ!」
俺は本能的な恐怖に襲われた。ヤバすぎるホンモノがいるグループは真のハードコアさ。おっかないだろ?
予測不可能でスリリングな言動の数々。今後も卑劣さにみがきをかけて行くであろうエリザベス・ダイナミックに要注意だ!
「アタシ明日のライブではハープ吹きまくりたいわ!」
もう一人の廃人、ともみダイナミックは高らかにこう宣言していた。
1度言い出すと決して後には引かない老婆のようなカタクナさが彼女にはある。説得なんて無駄なコトなのである。
「ワタシが気持ちよく吹けるような環境作りが大切やね!」
竹村健一口調で単なる『命令』である。我々は従うしかナイんだ。
『今日のブルース』という即興ソングでオーディエンスのご機嫌を伺った。しかし鼓膜が破れそうなブーイングの嵐だった。
ともみダイナミックほどブーイングが似合う女は他にいない。実にリラックスした表情でデタラメなハープを吹き続けた。憎しみとブーイングは彼女にとってのシャネルの5番なのか?平成のマリリンは痴呆のようにハープを吹きまくる!
『ううっ、なんてスゴイ絵ヅラなんだ!考えうる限り最悪の地獄絵図だ!』
俺の歌も『ブルース』だなんて言っておきながら所々にヨーデルが入る超オゲレツソングで地獄度数がさらに倍増する。
いったいこれは何なんだろう?もはや音楽でもナイ。異常者がさらなる異常を求めてみじめに競い合う大運動会なのだ。みんなもレッツ異常者になれ!てな訳で今後はドンドンステージに上がってこいよ。ガンガン這いづり回ろうぜ!ナンノコッチャイ!
阿鼻叫喚の中、俺達のステージは終わった。ダイナミックオーシャンズで国民栄誉賞はムリかも知れないが、そんなのなくてもこのサウンドが俺の好みなんだ。でもまだまだヌルイんだぜ。もっともっとダーティーにいきたいな。
この世の片隅にいさせてくれるだろう?俺達を。ウジムシのようにうごめいてもイイんだろう?ダイナミックなら。