
6月5日(火)
昼間自転車で立川を放浪。
歩道をノロノロ走ってたら後ろからオヤジの乗った自転車が俺を追い越そうと凄いスピードで突っ込んで来た。
すぐに追い抜いてくれりゃ良かったのだが、オヤジはあわてていたのだろう、バランスを崩してあろうことか俺の側に倒れてきた。
「ウゲ〜ッ!あぶねえ〜!」
俺は絶叫したが上手く身をかわすコトができずカミカゼオヤジのえじきとなってしまった。俺と俺の自転車はひっくり返り、したたかに地面に打ちつけられた。
「テメエ!このドキチ〇イがッ!あぶねーじゃねーか!」
俺はオヤジをどやしつけた。オヤジはすぐに陳謝するものだと思っていた。それがマナーだと俺は信じていたからだ。
「やかましい!テメエこそ気をつけやがれ!」
オヤジは逆ギレして俺に叫んだ。な、なんだって?後ろから突っ込んできといて『気をつけろ』だと?俺は一瞬自分の耳を疑った。俺のような誇り高き男に対して暴言を浴びせるとは命知らずもハナハダシイ。オヤジは自分で自分の死刑執行書にサインをしてしまったも同然である。
「おんどりゃ〜ッ!なにをぬかしてけつかんじゃい!殺てまうどしまいにゃー!」
頭に血が昇った俺は母国語(大阪弁)でまくし立てた。マフィアの血が爆発したのだ。
あまり言いたくないが俺は普段大人しい分、怒ると狂人のようになってしまう。オヤジは半狂乱となった俺を見て凍りついてしまった。
「あ〜ッ、自転車壊れとるやないか!ワレどないしてくれるんじゃい!」
見ると前輪の中にライトがひん曲がって食い込んでいる。これでは走れない。
「うお〜ッ!レイプしてやるぅ!」
今まさに飛び掛かろうとした瞬間、オヤジは突然Uターンしてものすごいスピードで逃げ出した。
「え〜ッ、なにそれ!マジかよ!」
俺はあっけに取られオヤジの後ろ姿を見つめた。自転車を立ちこぎして必死のパッチになって逃げてゆくアワレな姿。なんて逃げ足の早さだよ。
「くぅおら〜ッ!待て〜!」
俺はカンカンになってピョンピョン飛び跳ねていた。するとイキナリ後ろから俺の肩をポンと叩くヤツが現れた。
「誰じゃい!代わりにお前をレイプするぞ!」
鬼の形相で振り返ると、俺はヤツの姿に度肝を抜かれ目ン玉が飛び出た。
金髪ロン毛、顔グロのオソロシイ不良少年が俺の前に立ちはだかっていたのだ。
「ぎょえ〜!なんなんですかアナタは〜!」
俺は恐怖で腰を抜かした。
ド不良はもう一度俺の肩を叩くと血走った目でこう叫んだ。
「アニキ!俺に任せとけ!捕まえて連れてきますよ!」
俺にパチッとウインクすると、逃げるオヤジを追って脱兎のごとく走り出した。
「え〜ッ、なんなのこのシチュエーションは?お前なんで勝手に熱くなってんの?大体なんで『アニキ』なの〜?」
俺の制止も聞かずド不良はオヤジ狩りに全力疾走して行った。やがて二人は視界から消えて行った。
「…いったいナンナンダあいつらは…。」
俺はボー然としてその場に立ち尽くした。まったく訳がワカラナクなってしまった。俺はナニをやってるんだ?そもそもそんなに怒んなくてもよかったんじゃナイのか。後ろを向いて逃げなきゃナラナイなんて恥辱を年長者に味合わせてはいけなかったんじゃないのか。
俺はモーレツに後悔した。『短気は損気』。ホントそうだよな…。ニガイ痛苦だけが残ってしまった。今すぐブルーハーツの『人にやさしく』を聞きたかった。
俺はカタカタいう自転車を押しながら、悲しい気持ちでその場を離れた。
『俺は絶対悪くない』
そんな風に思い込むのが俺はキライだし怖いのである。でも今日はそう思ってしまった。狂ったオヤジと口論してしまった。
自分に非はないと思っているヤツラの争いごとが繰り返される世界。できるコトなら俺はそんな世界から逃げたいのである。そのためにも『人にやさしく』するコトは必要だと思うんだが…。