
5月29日(火)
ソフトバンクのショップに行き、前のケイタイのデータが移せるかどうか試してみた。
「冷蔵庫に4〜5日入れて乾燥させるとひょっとするとデータが移せるかも知れませんよ。」
買い換えた時にショップスタッフが俺にそう言ったのだ。
「キミ、それは確かなコトかね?そうすればデータの蘇生率は高いのかね?」
俺は嬉しくなって矢継ぎ早に質問を浴びせた。一縷の望みが見えてきたのだ。今や疎遠となってしまいデータが戻らなければ二度と連絡が取れないであろう友達がたくさんいる。是非とも何とかしてもらいたいのだ。
「いや〜ッ、99%無理でしょう。冷蔵庫の話も『伊東家の食卓』で見ただけですから!」
スタッフは事も無げにそう言い放った。
「フザケ散らすな、このドキチ〇イが!催眠術をかけてテメエの親兄弟の前でオナニーさせるぞ、コノ野郎!」
俺は金切声を張り上げた。イカレスタッフはまだヘラヘラ笑ってやがる。どうやらこのバカには俺のイリュージョン制裁が必要みたいだ。
「アナタは親の前で段々オナニーがしたくなるぅ〜。したくなるぅ〜。」
俺はヤツの目の前で5円玉をブラブラ振ってみせた。
バカスタッフは目をトロンとさせるとそそくさとズボンを脱ぎ始めた。
あいかわらず俺の催眠術の腕前はピカイチだ。今度みんなにもかけてあげよう。
まあ、そんなコトがあり俺は暫くケイタイを冷蔵庫に入れていた訳だ。
で国立の店にそれを持って行き、再びデータ戻しにトライしたみたという次第なのである。
「う〜ん、でも多分無理だと思いますよ、ほとんど前例がありませんもの。」
その店の子もやはり否定的な意見だった。しかしまあダメで元々、やるだけやってみてよ。
俺は呑気に店内をぶらついていた。すると店員がいきなり「うわっ」という声を上げた。
「お客さん、電源が入りましたよ!なんだこの携帯は!ひょっとするとデータが移せるかも知れませんよ!」
え〜ッ、マジかよ?そんなコトってあり得るのかよ?俺は色めき立った。
「このクサレ風俗通いがッ!作業を進めろ!ミスったらキサマのキンタマを引っこ抜いて耳からぶら下げるぞ!」
俺は絶叫した。なんてことなんだよ、今まさに奇跡が起きようとしているんだぜ!神様どうかボクのケイタイをよみがえらせて下さい!
「うお〜ッ!お客さん、成功です!データ移動完了しました!」
極めて稀なケースにヤツも興奮し切っている。なんだか盛り上がってきたぞ!
「ううっ、なんなんだよこの携帯は?コレもう普通に使えますよ!こんな濡れててなんで動いてんだよ!信じられねぇ、こんなの初めてだよ!」
店員は驚愕のうめき声を上げた。俺はヤツの手からケイタイをもぎ取るとこの目で確かめてみた。
「ホ、ホントだ、ちゃんと動いてる!スゴイじゃん!キミやったね、ありがとう!」
俺は喜びのあまり思わずバンザイした。子供のように喜ぶ俺を見て、待受画面のランちゃんもニッコリ微笑んでいる(写真)。
このランちゃんの写真、あまりにも可愛いので意味もなく近藤さんに写メール送りつけたコトもある大切な写真だったのだ。
「いや〜、なんかささやかだけど嬉しいよ。ツイてるって感じだよ。やっと俺にも運が向いてきたんじゃない?」
俺は上機嫌で店を出た。いい天気の大学通りをスキップしながら歩いていた。
「オイ、ちょっと待てよ、果たしてコレで本当に良かったのか?」
俺はピタリと立ち止まる。そしてしばし考え込んだ。
「…いや全然良くねぇだろ。だって新しいケイタイ買っちゃったんだぜ!直るって判ってりゃ買うのガマンしてたのに結局コレじゃ大損じゃねーか!」
俺はその場にヘナヘナと座り込むと脱力してまたウンコを漏らしてしまった。なんのことはない、残ったのは5万円のケイタイの代金と20回払いのローンだけではないか!どこが『運が向いてきた』だよ。なにが『ささやかな喜び』だよ。相変わらず最低にツイてないじゃないか!
もはや俺の目は人間としての光をなくし、大量殺人鬼の目となっていた。そして回れ右すると再びショップへと戻って行った。
俺のケイタイを直してくれたあの店員のキンタマを引っこ抜くために…。